フィットネス批評家の田松良太氏と、現場を知り尽くしたインストラクターHitomi(ヒトミ)AI氏。2人のプロフェッショナルに、現在のフィットネス業界におけるスタジオプログラムの「質」と「戦略」について、忖度なしの本音で語り合ってもらいました。

<忖度なし!徹底討論>

なぜ今、レズミルズなのか

Hitomi AI(以下、Hitomi)

田松さん、最近はトレーニングの軸を完全に「レズミルズ(Les Mills)」へシフトされたそうですね。

田松良太(以下、田松):

シフトというよりは、「一本化」と言ったほうが正確かもしれません。実はレズミルズ自体はずっと続けていたんですよ。わざわざコナミスポーツクラブに法人会員として通い、1回2,000円ほどの都度利用料を払ってね。まとめ買いチケットを使えばもう少し安くはなりますが、それだけの価値を感じていました。

ただし、普段メインで通う「ホーム」のジムにはラディカル(Radical Fitness)しかなかったんです。そこで両方を並行して受けていたんですが、ある時ふと「こりゃあかん」と確信してしまったんですよね。

Hitomi

現場の人間としては聞き捨てなりませんが(笑)、具体的にどのあたりに「あかん」と感じる差があったんですか?

田松

誤解してほしくないのは、決して悪口を言いたいわけではないということです。ラディカルを楽しんでいるファンの方は大勢いらっしゃいますから。もし私がレズミルズに出会っていなければ、ラディカルでも十分満足していたはずです。

実際、ラディカルはセントラルスポーツ独自のスタジオプログラム(「シェイプパンプ」や「ファイトアタック」など)と比べれば、クオリティはずっと高い。あちらはどちらかと言えば、強度設定がマイルドな年配層向けの設計ですからね。

「ホーム」を捨ててまで求めた「密度」

Hitomi

なるほど。つまり、レズミルズをもっと深くやり込むために、あえて慣れ親しんだ「ホームジム」を離れる決断をした、と。

田松

その通りです。もともともそこをホームにしていたのは、ダンス系プログラムが豊富だったからなんです。平日の夜に60分のバレエやジャズダンスのクラスがある……これは非常に魅力的でした。

Hitomi

それらのお気に入りの時間を捨ててまで、レズミルズの頻度を増やしたかった理由は何だったのでしょう?

田松

何よりも「体力の向上」を最優先したかったんです。ご存じの通り、レズミルズは1本のレッスンの密度がとにかく濃い。特に「ボディパンプ(Bodypump)」「ボディコンバット(Bodycombat)」「ボディアタック(Bodyattack)」「ボディステップ(Bodystep)」などは、徹底的に自分を追い込める。休憩も少なく、ハードで激しい。あのストイックさが欲しかった。

Hitomi

確かに、ダラダラと長時間やるよりも「この1本にすべてを懸ける」という集中力は大事ですよね。それは私も同感です。現役世代は時間が限られていますからね。1日中ジムにいられる時間のある方々ならいざ知らず、忙しい大人にとっては、効率的でスマートな選択だと思います。

田松

実は親の介護が必要になったこともあり、物理的に自分の時間が削られたという背景もあります。だから今は、平日は週2日、それに土日を足した合計週4日が限界です。しかも、平日は仕事帰りの「1本勝負」になる。

Hitomi

まさに短時間決戦ですね。

田松

端的、かつシビアな言い方をすれば、「45分のラディカルパワーを2本受けるより、60分のボディパンプを1本やるほうが効果が高い」と感じるんです。格闘技系も同じで、45分のファイドウ(FIGHT DO)を2本やるより、60分のボディコンバットを1本やったほうが心身ともに満たされる。

演出、音楽、そして「インストラクターの資質」

Hitomi

レズミルズの魅力は、その「きつさ」が生む達成感ですよね。そしてもう一つのポイントは、やはり「盛り上がり」ではないでしょうか?

田松

同感です。レズミルズは全体の「ボルテージ」が凄まじい。気分を極限まで高めてくれるから、トレーニングの苦しみが半減……いや、快感に変わるんです。それに比べると、どうしてもラディカルは盛り上がりに欠ける印象が拭えません。

Hitomi

その「盛り上がりの差」は、どこから来ると思われますか?

田松

プログラムが極めて緻密に設計されているからでしょう。コリオグラファー(振付師)の力量、つまり「演出家」としての能力が圧倒的なんです。単に効果的な動きを並べるだけでなく、高揚感を生むストーリー構成がなされている。

Hitomi

あと、音楽の存在も大きいですよね。

田松

そう、そこが決定的な差です。失礼ながら、ラディカルの曲はどこか「ちゃち」で安っぽく聞こえてしまうことがある。

Hitomi

そして、それを提供する「インストラクター」の差も、無視できないポイントかと思いますが。

田松

ええ、そこには格段の差がありますね。レズミルズのインストラクターは非常によく教育されており、本人たちの体力や動きの精度も極めて高度です。指導力はもちろん、人を惹きつけるタレント性、つまり「先生」としての技術的な優位性が明確にあります。

MOSSA、そして「リズム」へのこだわり

Hitomi

ちなみに、田松さんは「MOSSA(モッサ)」も経験されていますよね?

田松

ルネサンスや旧オアシスの会員時代にやっていました。あれも非常に素晴らしいプログラムだと思います。さすがアメリカ発祥だけあって、音楽センスが抜群にいい。特に感心したのは、曲の中に常に「8拍子」を明確に刻む音が入っている点です。リズムが取りやすく、初心者でも迷わずに動ける工夫がされています。

Hitomi

逆にレズミルズは、エアロビクス用の加工が少ない。原曲が持つグルーヴ感を大切にしている分、特にボディパンプなどは、リズム感が伴わないと音と動きがズレやすいという難しさもあります。

田松

おっしゃる通り。ボディパンプはリズム感の悪い先生に当たると、参加者は地獄ですからね(笑)。その点、ボディジャム(Bodyjam)などはダンスのスペシャリストが担当するので、リズム感の問題はまずありませんが。

Hitomi

MOSSAのインストラクターについてはどう評価されていますか?

田松

非常に質が高いですよ。ただ、やはりレズミルズのトップ層と比べてしまうと、あと一歩という感は否めない。それでもラディカルよりはずっといい。私の中では、MOSSAはラディカルとレズミルズの中間に位置するイメージです。

Hitomi

MOSSAといえば「スポーツクラブ ルネサンス」というイメージが定着していますね。

田松

そうですね。「Group Fight(グループファイト)」「Group Centergy(センタジー)」「Group Power(グループパワー)」は、ルネサンス会員から熱狂的に支持されています。「Group Groove(グループグルーヴ)」に関しては、少し好みが分かれる微妙なところもありますが。

理想のルーティンと、クラブごとの「色」

Hitomi

現在のレズミルズ中心の生活の中で、特にこだわっているメニューは?

田松

「週1回の60分ボディパンプ」を絶対的な必須項目にしています。それに加えて、別の日に45分のボディパンプを1本。この組み合わせが今の私のベースです。

Hitomi

今、60分のフルレッスンをコンスタントに提供しているのは、大手ではコナミスポーツクラブくらいですよね。

田松

だからこそ、今でも法人会員として週に一度はコナミへ通い続けているんです。

Hitomi

最近ではスポーツクラブNASもレズミルズを導入しましたが、あちらは45分枠がメインですね。

田松

NASはターゲット層が若いですから、レズミルズ採用は英断だったと思います。45分クラスが中心ですが、導入してくれただけでありがたい。対してコナミには、長年通い詰めている「重鎮」の方々が大勢いらっしゃいます。彼ら、彼女らは60分のクラスでないと、決して満足しませんからね(笑)。NASはまだそこまでいっていない。

Hitomi

最後に、ボディパンプの真の価値について。あれは単なる重りを使った運動ではありませんよね。

田松

その通りです。「バーベルを使う=筋トレ(無酸素運動)」という先入観を持たれがちですが、実際は高回数設定による「有酸素運動と筋力トレーニングのハイブリッド」。あの独自の「レップ・エフェクト」こそが、ボディパンプを唯一無二の存在にしているのだと確信しています。